
<インタビュー日>2024年12月某日
<年齢性別>30代女性
<資格>主要資格保持無し
<前職>Big4 FAS M&Aアドバイザリー部門 シニアスタッフ(年収1,000万円)
<現職>東証プライム上場IT企業 新規事業開発担当(年収900万円)。6カ月間在籍中
今回、Big4 FASに5年以上在籍し、その後に事業会社(新規事業開発担当)へ転職をされた方に転職の経緯および転職後の感想を伺いました。
この方は、事業会社への未経験の転職でありながらも、年収は大きくダウンすることなく転職を行うことができた稀有な事例の方です。
しかしながら、新規事業開発の経験を積むことができた一方でカルチャーや会社のミスマッチが起きてしまい、転職して6カ月ほどですが現在ではすでに早期の離職を検討するにいたりました。
本記事ではインタビューにご協力いただいたことで、FASからの転職の詳細や、同じようなことを避けるためにはどのようにすればよいか反省点をご紹介させていただきます。
【転職前】Big4 FASにおけるキャリア
Big4 FAS時代の働き方
私は中途でBig4 FASにM&Aアドバイザリー部門に入社をいたしました。
在籍期間は5年以上在籍をして、M&Aアドバイザー業務は一通り体験できたと自負しております。特に、M&Aアドバイザー時代は欧米やASEAN諸国のクロスボーダー案件を中心に従事しました。M&A業務自体にはやりがいを感じておりました。
Big4 FASで働いていて良かったこと
Big4 FASで働いて良かったことは、案件数が多かったためM&Aアドバイザー業務の経験を十分に詰めたことです。
この業界では、FAとしてであれば平均的に1年間2件以上の案件をクロージングできていれば良いと言われております。
私自身もその基準はクリアできるほど、多くの案件の実務経験を積むことができました。これは案件数が豊富にあるBig4 FASならではだと思っています。加えて、フルリモート・フルフレックスと柔軟な働き方ができる点も大変すばらしい点でありました。
ただし、徐々にM&A業界から事業会社への転職欲が高まっていきました。
Big4 FASからの転職を決意した理由
転職をしたいと思い始めた一番の理由は、自らの手で事業を作ってみたかったためです。
これは良くある話ですが、M&Aアドバイザー業務を行う中で経営者や事業責任者と話をするうちに、自分でも事業を立ち上げてダイナミズムを感じたいと思うようになりました。
また、ネガティブな理由としては、M&A業務にマンネリを感じてしまったこともあります。
3年も働けばM&Aアドバイザー業務はある程度は一定経験できてしまい、私の中で4年目からは正直同じことをやっているような感覚に陥っていました。クロスボーダー案件を中心に対応していたため時差対応でワークライフバランスが厳しかったという事情もあります。年齢的にもハードワークがきつくなってきていたので、ワークライフバランス改善を企図して事業会社への転職を目指しました。
M&Aアドバイザー業務の退職理由として、「自らの手で事業を作ってみたかった」は良く挙げられる理由です

【転職中】Big4 FASから事業会社への転職活動
Big4 FASからの転職で利用したサービス、ツール
転職活動は、複数のエージェントを利用して、新規事業開発を経験できる事業会社を中心に受けておりました。未経験転職ながらも、最終的に3社ほどから内定をいただきました。
Big4 FASからの転職先として決めた会社の決め手
新規事業開発の経験を積みたくて転職を決意したので、内定をいただいた会社から「新規事業開発の経験を本当に積めそうであるか」を重視して慎重に検討しました。
そして、実際に新規事業開発ポジションに配属いただける確約を頂戴して現在の会社に転職しました。
Big4 FASからの転職後の年収
年収に関しては、特別な交渉はしませんでした。
しかし、3社同時に内定をもらって比較したときに特に年収を考慮してもらった1社に決めました。
そのため、結果として年収はFAS時代の物から大きく下がりませんでした。また、その会社がたまたま私が入社する直前に年収を上げたということも寄与しており、その点で偶然の要素もありました。
【転職後】Big4 FASから事業会社への転職結果 | 得られた経験と後悔
Big4 FASから事業会社へ転職後の状況
Big4 FASから転職して6カ月が経過しました。
結果として新規事業開発の経験は積めましたが私が望むような形の経験ではなく、今は転職活動を水面下で進めております。
1年目が終わったら転職を行うつもりです。
Big4 FASから事業会社へ転職した感想
転職をした感想として、ポジティブな面でいうと、やりたいことをやらせてくれる会社ではあるので、事前の確約通り新規事業開発の経験を積めたことは良かったです。
一方で、ネガティブな面としては、直属の上司との相性が合わなかったことです。直属の上司(戦略コンサル)は自分の意見が非常に強い方で、当方が意見を上げても通ることはありませんでした。そのため、基本的には当上司が決めた数字に沿って企画案を作ることとなり、新規事業開発にもかかわらず当方の裁量は限られておりました。
このように、トップダウン気質が強く自分の意見が絶対だと思っている方の下で新規事業開発をすることに非常に辛さを感じております。
Big4 FASで得た経験と知識は事業会社で役に立ったか?
M&A業務で得た経験とスキルは、新規事業開発に役に立ちました。具体的には、数字を用いて事業モデルを検討・作成するときです。
FAS時代にバリュエーションやモデリングを行って財務三表に関する知見を深めることで、「どうやって売り上げを積み立てるのか?コストを削減すればよいのか?」という見方を自然とできるようになり、結果としてその経験が事業モデルの作成にとても役に立ちました。
Big4 FASから事業会社に転職をするとしたら気を付けるべき点
事前ヒアリングには絶対に力を入れた方が良いです!
特に、「自分の直属の上長がこちらの話をちゃんと聞いてくれるか」「当該ポジションでは、社長に直接報告をすることや意思決定を下したりなど裁量はあるか」などは確実に聞くようにした方が良いです。
また、入社する場合は希望するポジションに配属されるかしっかりと事前確約を貰うことはします。周囲の人間を見ると、「新規事業開発ができるという建前で入社をしたところ、実際には営業をやることになった」という人は複数いましたので、しっかりと言質を取ることは重要だと思います。
【最後に】管理者の分析
インタビュイーは、未経験でBig4 FASから事業会社・新規事業開発ポジションにチャレンジをされた方でした。
意欲は高く実際に確約を貰いながらも、残念ながら結果として上司の方との相性不一致で早期退職を検討する形となりました。
実際、FASから事業会社に転職して早期離職する要因の一つが「カルチャーや人間相性の不一致」であることはよくあります。背景として、コンサルやFASはドライである一方でロジカルであればその意見が尊重される傾向にある一方で、事業会社はウェットな環境でトップダウンの気質が強いことは往々にしてあるためです。そのため、転職を行う場合は、その部署の人との人間的相性が合うかまで見極めることが重要となります。
本記事が事業会社への転職を考えている人のお役に立てば幸いです。
今後も更新をしてまいりますので、面白かったらX(Twitter)で記事をRT、もしくは管理者アカウントのフォローをよろしくお願いします。
プライバシー保護のため、インタビュイーのプライバシーにかかる部分については管理者にて一部脚色を加えさせていただいております。こちらは、インタビューの内容に影響が出ない範囲で行っております