【キャリア実録#6】Big4 FASから日系投資銀行への転職!キャリアアップの結果を徹底ヒアリング!

今回は、Big4 FAS FAチームから日系投資銀行に転職を行った20代後半女性にキャリアインタビューを行いました。

この方は、Big4 FAS FAチームへ新卒で入社し、3年ほど働いてから日系投資銀行に転職をいたしました。

Big4 FAS FAチームから日系投資銀行への転職は、明確なキャリアアップである上にM&A業務という共通項があることから、FAS在籍の方であれば誰しも気になるキャリアの一つとなっています。

しかし、現実問題は様々な違いがあり、Big4 FASから投資銀行に転職して短期で離職することも珍しくありません

本日は、そのような中で投資銀行で3年間のキャリアを経た方に、Big4 FASから投資銀行への転職の実態をヒアリングいたしました。

<インタビュー日>2025年2月某日
<年齢性別>20代後半女性
<資格>主要資格保持無し
<キャリア>Big4 FAS(FAチーム)→日系投資銀行
<前職>Big4 FAS(FAチーム) (年収900万円、3年間在籍)
<現職>日系投資銀行 (年収1,600万円、3年間在籍)

目次

【転職前】Big4 FAS時代

Big4 FAS入社の背景

私は新卒でBig4 FASに入社をしました。

当初はコンサルティングファームを第一志望としており、大学3年生夏より就職活動をしておりました。その一環で、Big4 FASも受けたのですが、就職活動を続けるうちにM&Aに特化したアドバイスを行うFASの優先度が自分の中で上がりました。

FASへの優先度が上がったきっかけはいくつかありますが、大きいところで言うと『MBAバリュエーション』というM&Aのバリュエーションにかかる本を読んだことです。これを読んだことでM&Aやバリュエーション業務に関する関心が自分の中で大きくなりました。

最終的にBig4 FASへの入社を決めました。

『MBA バリュエーション』はバリュエーション業務を学ぶうえで必ず読むべき本の一つに挙げられることが多い書籍です

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なお、当時は財務領域へのリサーチが不十分で、就職活動時は投資銀行については全く検討しておりませんでした。

今振り返ると、新卒で投資銀行に挑戦する選択肢もあったかもしれません。ただ、FASでの経験が現在の私を形作っているのも確かです。

Big4 FASでの業務内容

Big4 FAS入社後の配属選択

入社後の配属では、M&A戦略業務とファイナンシャルアドバイザリー業務に関心があったため、ストラテジーチームとFAチームのどちらに入るか悩みました。

しかし、最終的には、FAチームへの配属を希望しました。なぜなら、FAチームであればM&A業務の各フェーズに幅広く関与できて、M&A業務に携わるプロフェッショナルとしての経験を早期に積めると考えたからです。

また、FAであれば、その後の転職先が多くキャリアの観点からも有利だとわかったので、最終的にFAチームへの配属を希望して、実際に配属されました。

Big4 FAS入社後の実際の業務

初めは慣れない業務に戸惑うこともありましたが、上司の丁寧な指導のおかげで、徐々に業務の全体像を掴むことができました。特に印象に残っているのは、某大手企業によるTOB案件です。深夜までかかる作業も多かったものの、案件のクロージングまで携わることができ、大きな達成感を得ることができました。

FAチームではM&Aアドバイザー業務に注力して、M&A業務経験を豊富に積むことができました。1年目から主体的に案件に関与させていただき、上司からの評価も高かったと自負しています。

また、業務の特性上、クライアントとの直接的なコミュニケーションも多く、ビジネスパーソンとしての基礎も身につけることができました。さらに、TOB案件や海外案件にも携わる機会があり、後の投資銀行業務にも活きる経験を積むことができました。

Big4 FASでの働き方

入社1年目から海外案件などに関与させてもらったので、必然的に夜型になってしまいました。家は職場から近かったので、タクシー帰りもしょっちゅうありました。

また、全体的に長時間勤務をすることが多く、労働時間で見ると日系投資銀行よりBig4 FAS時代のほうが長かったです。理由は、エグゼキューション以外にもオリジネーション業務を行うことが多かったためです(詳細後述)。

Big4 FASで働いて良かったこと

配属リスクなく、M&Aアドバイザー業務の経験を詰めた

入社してすぐにM&Aアドバイザー業務経験を積めたことは、Big4 FASに入社した最大のメリットでした。

日系投資銀行では、各社ともM&Aアドバイザー業務を志望する学生が多いため、新卒ですぐにアドバイザーチームに配属されるのはせいぜい10-20%、会社によっては最低でも1-2年程度カバレッジ業務を積まないといけません。

しかし、Big4 FASであれば志望をすれば比較的早期にM&Aアドバイザー業務に就けるため、より確実にM&A業務経験を積むことができました。

日系投資銀行と比較すると会社の雰囲気が良い

転職してから分かったのですが、Big4 FASは業務が難しくハードワークが求められる環境でありながらも、比較的雰囲気が良く和気あいあいとしております。

そのため、新卒で右も左もわからない状況で入社する会社としてはとてもよく、入社後も丁寧にオンボーディングしていただけました。仕事終わりに飲みに行ったり休日にゴルフに行くことも多く、良い関係を築けておりました。

一方、日系投資銀行の場合、より緊張度が高く雰囲気も厳かなので、Big4 FASと比較すると必ずしも良い雰囲気とは言いづらいです。

関与したい案件を一定程度志望できた

Big4 FASでは、定期的にチームのアサイン担当者と面談を行い、自身が希望する案件を伝えることができました。もちろん、100%当方の志望を聞き入れられることはありませんでしたが、一部希望は応じていただき自分がジョインしたい案件に関与することができました。

例えば、私はBig4 FAS入社後からさまざまな種類の案件を経験したいと考えていたため、Big4 FASでは扱うことが少ないTOB案件についてもアサインを常々依頼しておりました。

結果として、TOB案件にアサインされることができ、その後日系投資銀行に転職した後に大変役に立ちました。

Big4 FASから転職を決意した理由

【ポジティブ】M&Aアドバイザーとしてのキャリアアップ

Big4 FASでも確かに充実した経験を積めていましたが、M&Aアドバイザーとしてのレベルアップを考えたとき、投資銀行で業務経験を積むことが非常に重要だと感じたため、Big4 FASから投資銀行への転職を考えました。

また、Big4 FASの良いところとして「雰囲気が良い」と申しましたが、裏を返すと「緊張感が欠けている」ようにも思えました。

そこで、より緊張感がありプロフェッショナルとしての経験が積める日系投資銀行に行きたいと思うようになりました。

【ネガティブ】Big4 FASではエグゼキューション以外の案件も一定対応しなければならなかった

Big4 FASではオリジネーションチームとエグゼキューションチームが分かれていないため、ファイナンシャルアドバイザーチームといえども営業活動をする必要がありました。

また、Big4 FASは日系投資銀行ほど受注する業務範囲を明確に絞ってはいないため、パートナーやマネージャーによってはM&Aと全く関係のない、例えばリサーチ業務のようなどちらかというと総合計コンサルティングファーム向けの案件を受注する人も多かったです。

このように、M&Aアドバイザー業務経験を積みたいにもかかわらず、エグゼキューションに注力ができなかったことが、Big4 FASから日系投資銀行への転職を考えた理由です。

【転職中】Big4 FASから日系投資銀行への転職活動

転職先として選んだ会社の決め手

日系投資銀行へ複数社応募を行い、そのうち転職の条件が良く、M&Aアドバイザー業務経験を一定程度積める会社を選び転職いたしました。

転職前と転職後の年収推移

転職前のBig4 FASの最終年度の年収は、賞与込みで900万円でした。

日系投資銀行への転職後は、賞与や福利厚生も含めると大幅な年収アップとなり、大変満足のいく内容となりました。

日系投資銀行への転職後は、年収ダウンとなりましたが最終的にプラスとなりました。

キャリア在籍期間職階年収(賞与込み)
Big4 FAS1年目アナリスト600万円
2年目アナリスト700万円
3年目アソシエイト900万円
日系投資銀行1年目アソシエイト1,200万円
2年目アソシエイト1,400万円
3年目アソシエイト1,600万円

【転職後】Big4 FASから日系投資銀行への転職結果

日系投資銀行での業務内容

日系投資銀行における業務内容は、当初想定以上にはBig4 FASと大きな違いはなく、日系投資銀行に来て初めて行った業務というものはあまり多くはありませんでした。

私が転職前にTOB案件の経験を積んでいたことや事前にLBOの勉強・モデルの習得を行っていたことがその要因かもしれません。その意味では、Big4 FAS時代に日系投資銀行で役に立ちそうな案件が経験できていてよかったと思っております。

一方で、日系投資銀行の環境は、予想していた以上に厳しいものでした。

それは、スタッフも含めて周囲の方々のレベルが非常に高く、業務に対する熱量も格段に違ったためです。スタッフクラスの方々の仕事に対する情熱、マネージャークラスの方々の知識の深さや判断の的確さには、日々刺激を受けています。

日系投資銀行での働き方

日系投資銀行の働きやすさ

Big4 FASはフレックス制度やリモートワークを導入している一方で、日系投資銀行は定時が決まっており基本は出社なので、働きやすさはBig4 FASのほうが良かったです。

しかし、前述の通り、労働時間という観点ではBig4 FASのほうが長かったです。理由としては、Big4 FASではオリジネーション業務の比重が重く、エグゼキューション業務の合間で時間があるときはオリジネーション業務を割り当てられ、それに対応する必要があったためです。

そのため、オリジネーション業務とエグゼキューション業務の両方を行わなければいけないBig4 FASと比較すると、日系投資銀行の労働時間は総じて短くなる傾向にありました。

日系投資銀行のカルチャー

組織の雰囲気や人間関係については、予想以上に戸惑いがありました。

Big4 FASは激務ながらも和気あいあいとした雰囲気がどこかありました。しかし、日系投資銀行においては、やはり高学歴高職歴のエリートである自負があるためか馴れ合いというものは全くありません。ミスがあれば、どんなに親しくても遠慮なく指摘が飛んできて厳しく指導をいただきます。

それ故に、Big4 FASとは大きく異なる職場文化に適応するまでに時間がかかりました。

しかし、一方で私自身はこのような緊張感のある環境を望んで転職した面もあるので、戸惑いはするものの今では納得して仕事をしております。

前職(Big4 FAS)で得た経験は日系投資銀行で役に立ったか?

Big4 FASでの経験は、日系投資銀行でも即戦力として高く評価されています。特にバリュエーション業務や契約実務の知識は、日々の業務で大いに活きています。TOB案件や海外案件への対応経験も、新たな環境で強みとなっています。

ただし、実際に働き始めてみると、Big4 FASと日系投資銀行では業務の質や深さに大きな違いがありました。

例えば、バリュエーションにおいても、Big4 FASでは比較的オーソドックスな手法が中心でしたが、日系投資銀行ではより複雑なモデリングや、マーケットの動向を踏まえたダイナミックな分析が求められます。

また、一つの資料を作成するにしても、何度も徹底的な推敲が必要です。Big4 FASではディスカッションペーパーの体裁はそこまで細部まで見られないものの、日系投資銀行では文字通りミリ単位のずれまで見られます。当初は「ここまでする必要があるのか」と疑問に思うこともありましたが、実際の重要な局面で、その綿密な準備が活きる場面を何度も経験し、その必要性を実感するようになりました。

日系投資銀行に転職をするとしたら気を付けるべき点

日系投資銀行から見るBig4 FASの偏見の強さ

率直に言うと、非会計士 Big4 FAS出身者の日系投資銀行内での風当りは強いです。

というのも、過去にもBig4 FASから日系投資銀行へ転職する人は多数いましたが、大体はPEファンドへの転職の足掛かりのために短期で離職したり、あるいは日系投資銀行が肌に合わなくて短期間で退職する人がいたようです。

そのようなことが起きた結果なのか、日系投資銀行の社員の中にはBig4 FAS出身者を「長続きしない」「プロフェッショナル意識が投資銀行と比較すると低い」と思う人もいます

そのため、特にBig4 FASから日系投資銀行に転職する場合は、そのような目で見られることは覚悟して、偏見を押しのけるくらい高いパフォーマンスを発揮するように心がけることはマストです。

日系投資銀行の高いプロフェッショナル意識

Big4 FASから日系投資銀行に転職する場合は、M&A業務の親和性は度外視して、0→1で改めてキャリアを積みなおすつもりで転職するべきだと感じました。そのくらい、Big4 FASと日系投資銀行の業務への向き合い方は違います。

むろん、両社ともM&Aアドバイザーなので、業務内容の親和性は一定程度あります。

しかし、残念ながら顧客へのアドバイスの仕方やプロフェッショナルとしての姿勢は日系投資銀行とBig4 FASとでは性質が異なる部分があります。

そのため、「Big4 FASに在籍していたから即戦力として通用するだろう」という考えで転職すると、Big4 FASと日系投資銀行のカルチャーギャップを感じてメンタルを崩すかもしれません。

今後のキャリアについて

今は現職でしっかりと業務に取り組み、M&Aアドバイザーの経験値を積み重ねたいと考えています。

日系投資銀行ではM&Aアドバイザー業務を数年経験したのちにPEファンドに転職する若手が多くいますが、私はこの仕事にやりがいと楽しみを感じる限りはM&Aアドバイザーの仕事を続けたいと考えています。

学ぶことが尽きることはなく好奇心が刺激される仕事であるため、これからも日々の業務に真摯に向き合いながら、M&Aアドバイザーとしての能力を高めていきたいと考えています。

【最後に】管理者のコメント

Big4 FASと日系投資銀行の両方に所属していた方だからこそいうことができる、厳しくも学ぶことが多いキャリア体験談でした。

管理者自身、日系投資銀行からBig4 FASへ転職した人間ではありますが、確かにプロフェッショナル意識は日系投資銀行のほうが高く、細かいミスに対する詰めも日系投資銀行のほうが厳しかったです。しかし、その分得られる経験値も日系投資銀行のほうが高いことは間違いありません。

一方で、Big4 FASはBig4 FASで素晴らしい点は沢山あります。

Big4 FASと日系投資銀行とで自身のキャリアに悩まれている方は、最終的な自身の中長期的なキャリアを見据えて、どちらを選ぶべきか考えるのがよろしいでしょう。

今後も更新をしてまいりますので、面白かったらX(Twitter)で記事をRT、もしくは管理者アカウントのフォローをよろしくお願いします。

プライバシー保護のため、インタビュイーのプライバシーにかかる部分については管理者にて一部脚色を加えさせていただいております。こちらは、インタビューの内容に影響が出ない範囲で行っております

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この記事を書いた人

IBD→FAS(M&A)→事業会社(社長室/事業責任者)。USCPA全科目合格。現在は複数事業(BtoB SaaS)責任者、新規事業担当、経営管理・M&A・IRが主要業務

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