M&A業界にはじめて身を置いてからしばらくが経過しますが、当初の私は適切な入門書を見つけられず、かなり遠回りをしてしまいました。
実は今でもその経験が少し悔やまれます。一方で、その経験があったからこそ、後進の方々に向けて効率的な学習方法を共有できる立場にいると感じています。
今回は、M&A業務プロセスを学ぶための必読書を紹介させていただきます。
実は、この分野の本当にお勧めできる本は意外にもそれほど多くなく、3冊程度に集約されます。
M&Aについて学べる本~M&A業務プロセス編~
企業買収の実務プロセス<第3版>
M&A実務にかかわる人なら誰もが一度は手に取る、いわば業界のスタンダード本です。
管理者も、転職時の面接前に本書の初版を必死で読み込んだ記憶があります。面接官から「M&Aプロセスについてザックリと教えて」と質問された際、この本で学んだ内容が大いに役立ちました。
最大の特徴は、Pre-M&AからPost-M&Aまでの一連の流れを網羅的に解説している点です。
具体的には、以下のような項目が詳しく解説されています:
・案件の発掘とソーシング
・初期的な価値評価
・各種デューデリジェンス(財務・法務・業務)の実施方法
・契約交渉のポイント
・クロージング後の統合プロセス
記載内容も平易であり、M&A実務にかかわらないヒトにも自信をもってお勧めできる書籍です。

改訂5版 M&A実務のすべて
この本も実務家の間では定評があります。ただし、『企業買収の実務プロセス』と比較すると、アプローチが少し異なります。より法務・会計の専門的な観点から解説されている印象です。
特筆すべきは、法令や法務論点の解説が充実している点です。また、PPAやグループ通算制度など、M&Aプロセスの周辺知識まで幅広くカバーしています。
正直なところ、私は最初この本の法務部分を読んだ際、難しすぎて投げ出したくなりました。専門用語が多く、法的な考え方に慣れていない私には、かなりハードルが高く感じられたのです。
それでも、実務経験を重ねるうちに、その重要性が徐々に理解できるようになりました。

M&A実務の基礎〔第2版〕
前2冊と比較すると、本書はやや形式ばった記載が多くありやや優先度は下がりますが、こちらもM&A実務プロセスを学ぶには役に立つ書籍です。
M&A実務の内容はもちろん網羅的に記載されております。
加えて、実際のM&Aのケーススタディが豊富で、理論だけでなく、実際のビジネスシーンでの応用方法を学べます。これにより、読者は自分が直面するかもしれない問題について事前に考えることが可能です。
一方で、本書の第2版は発行が2018年と7年前の書籍であり、法制度の変更や最新のM&A業界の動向を踏まえるとやや古い印象があります。

【最後に】管理者のコメント
これらの本は、確かにM&Aの業務プロセスを理解する上で非常に有用です。しかし、書籍だけでは得られないものもあります。
実際に実務に出てみると、人間関係やコミュニケーションの重要性を痛感することになります。特に以下の点は、書籍だけでは学べないと実感しています:
・クライアントとの関係構築方法
・DDにおけるPMO対応能力
・プレッシャーの中での冷静な資料作成能力
・予期せぬ事態への対応力
それでも、これらの本で得られる基礎知識は、実務での判断や行動の重要な基盤となっています。実際、管理者はBig4 FASから事業会社に転職して投資実務に携わった後も、これらの本を参照することがありました。
今後も更新をしてまいりますので、面白かったらX(Twitter)で記事をRT、もしくは管理者アカウントのフォローをよろしくお願いします。
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