M&A業務に携わり始めて間もない頃、管理者も法務面での知識不足に不安を感じていました。
特に、契約書レビューの際、基本的な用語の意味すら分からず、焦りを感じることも少なくありませんでした。
そんな中で、実務経験を重ねながら役立ち、かつ読みやすく面白いと思ったM&A法務論点にかかる書籍をご紹介したいと思います。皆さんは法務面での学習にどのようなアプローチを取られていますか?
M&A法務論点を学べる本 <入門>
ここだけ押さえる! 会社法のきほん 第2版
最初におすすめしたいのが、『ここだけ押さえる! 会社法のきほん 第2版』です。
いきなりM&A契約の専門書に手を伸ばすと内容の難解さ故に挫折してしまいます。そのため、会社法やM&A契約法務になじみのない方は、まずは「会社法とは?」という理解から始める方が良いでしょう。
本書は、会社法にかかる参考書籍の代表的学者である「神田秀樹先生」が監修した1冊です。
神田秀樹先生の監修のもと、難解な会社法の内容を平易な言葉で解説しているので、実務経験のない方でも理解しやすい構成となっております。
まずはここから始めることをお勧めします。

M&A法務論点を学べる本 <基本>
基礎を固めた後は、実務書の定番である『M&Aの契約実務 第2版』または『M&A契約 モデル条項と解説』に進むことをお勧めします。
これらの本は、M&A業務にかかわる人間であれば万人がおすすめするM&A契約実務が学べる書籍です。
重複している内容もあるので基本的に1冊あれば事足ります。
M&Aの契約実務 第2版
本書籍は、契約実務の具体的なプロセスや実例にフォーカスしております。
そのため、M&A契約実務を実際の業務の流れに沿ってストーリーを意識して理解したいと思うのであれば、本書籍が良いでしょう。
また、M&A業務の流れに沿って解説しておりますので、例えば買手と売手における留意事項を表形式で分かりやすく記載するなど買手・売手目線での法務論点への解説を行っているという特徴があります。

M&A契約 モデル条項と解説
本書籍は、②と比較するとよりM&A契約の各種条項に焦点を当てて解説しているという特徴があります。
流れとしては、実践的なモデル条項を紹介し、それに対する解説や実例を紹介するというのが大まかの構成となっております。
そのため、NDA/SPA/SHA等の各種契約書の条項についてピンポイントで調べたいということがあれば、本書籍がおすすめです。
また、こちらはコラムの内容が充実しており、その点でも興味深く学ぶことができます。

M&A法務論点を学べる本 <実務>
最後に、実務編として、法務の個別論点にかかる書籍のうち分かりやすくて参考になる本をピックアップいたしました。
個別論点にかかる本は星の数ほどあるため、ここでは管理者が分かりやすいと思った本を中心にご紹介いたします。
クロスボーダーM&Aの契約実務
海外案件特有の留意点を分かりやすく解説しています。
米国型と欧州型の契約書の違いから説き起こす構成は、実務での応用がしやすいものとなっています。

M&A担当者のための独禁法ガン・ジャンピングの実務
競争法対応において重要な一冊です。
ただし、所属する部門や担当案件の規模によって、必要度は大きく変わってきます。
投資銀行での業務を想定されている方には必須の一冊となりますが、小規模案件が中心のFAS業務であれば、優先度は下がるかもしれません。

ストーリーで理解するカーブアウトM&Aの法務
カーブアウト法務を専門に扱った珍しい書籍です。
”法務”とタイトルについているがタッピング段階から取り扱っているのでカーブアウト実務についても学ぶことができます。
カーブアウト案件が多いFAS勤務であれば読んで損はありません。

【最後に】管理者のコメント
法務面の学習は一朝一夕にはいきません。皆さんは、どの分野から学習を始めようとお考えでしょうか?
私の場合、最初は全ての本を一度に読もうとして挫折しました。しかし、基礎から順を追って学習することで、着実に知識を積み上げることができました。
個別論点に関する書籍は、ここで紹介した以外にも数多く存在します。重要なのは、自分の業務内容や将来のキャリアプランに合わせて、適切な教材を選択することです。
すぐに全てを理解しようと焦る必要はありません。着実に一歩ずつ、必要な知識を積み上げていくことをお勧めします。
最後に一点補足させていただくと、これらの書籍は法務DDの実務については深く触れていません。法務DDについて学びたい方は、別途専門書をお探しいただく必要があります。
今後も更新をしてまいりますので、面白かったらX(Twitter)で記事をRT、もしくは管理者アカウントのフォローをよろしくお願いします。
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