Big4 FASに5年間在籍し、その後に事業会社(経理職)を転職して、不動産投資家を行っている方へインタビューを行いました。
この方は、Big4 FASでM&Aアドバイザーで新卒として就職し働かれていましたが、キャリアに限界を感じて悩まれた結果、不動産投資家へチャレンジの道を歩まれる決断をいたしました。
本記事では、なぜBig4 FASを、引いてはM&Aキャリアを辞められたのか、どのようにして不動産投資家としての道を歩んでいるのかが記載されております。
特に、新卒としてBig4 FASで働いた後のキャリアが気になる方、M&Aキャリアを続けることに迷われている方、労働者から資本家への転身を図りたい方は是非本記事をお読みいただけると幸いです。

<インタビュー日>2024年12月某日
<年齢性別>30代男性
<資格>主要資格保持無し
<前職>Big4 FAS M&Aアドバイザリー部門 シニアスタッフ(年収1,100万円)
<現職>東証プライム上場不動産企業 経理担当(年収700万円)。3年間在籍中
【転職前】Big4 FASにおけるキャリア
Big4 FAS時代の働き方
私は新卒でBig4 FASにM&Aアドバイザリー部門に入社をして、転職するまで5年間在籍しておりました。
Big4 FASに転職したきっかけは、バリュエーション業務を学生時代に勉強していまして、その知識を存分に生かすことのできるBig4 FASを選びました。そのため、最初はバリュエーションチームを考えていたのですが、色々な業務にチャレンジできてバリュエーション業務も行えるM&Aアドバイザー部門を魅力に感じて、最終的にM&Aアドバイザー部門に入りました。
M&Aアドバイザー部門では海外経験があったこともあり、クロスボーダー案件に50%超アサインされ、昼夜を問わず仕事をしました。その結果、退職する直前は3-4つのエグゼキューション案件を掛け持ちして、残業時間は月平均150時間ほどありました。
Big4 FASで働いていて良かったこと
Big4 FASで働いてプロフェッショナルとして徹底的に鍛えていただいたことが、最もよかった点です。ハードスキルは転職後も大変役に立っております(詳細後述)。
また、自分が計算した企業価値が最終的な取引価値につながる瞬間は、大きなやりがいを感じました。会計数字や外部環境の数字などを踏まえて会社の企業価値を可視化するプロセスや算定手法も決められたもの使えばよいというわけではなく、取引ごとにオーダーメイドの感覚で作っていく必要があるのは入社前では分からない良いギャップでした。
結果的に、1社目として私が所属したBig4 FASを選んだことには満足しております。
Big4 FASからの転職を決意した理由
端的に言うと、「ワークライフバランスを求めて」と「労働者としての立場から脱却するため」です。
まず、「ワークライフバランス」の点でいうと、当時私はエグゼキューションだけで常時4-5件保有しており長時間労働(平均月150時間)が常態化しており、体力的にきつくなっていました。加えて、マネージャー昇進が見えてくる年次になっており必然的に上司のマネージャーの方々の働き方を意識していたのですが、彼らが30-40代になっても終電近くまで働いているのを見ると、この働き方を10年近く続けることに忌避感が生まれました。
そして、「労働者としての立場」の点でいうと、知り合いやニュース経由で資本家としての生き方にあこがれを持ちました。M&Aアドバイザーを務めればその後ファンドやCFOとしての道が見えていることは分かりましたが、働く肩書が変わるだけで労働者としての立場には変わりがなく、会社や組織の意思決定に左右される状況に疑問を持っておりました。それよりも、資本家として外部環境に働き方を左右されることなく、自立した生き方を送ることに強い関心を持ちました。
上記を意識してからは、退職する半年くらい前より100万円ほどを使って簡単な不動産投資をはじめて資本家としての第一歩を踏み始めました。
【転職中】Big4 FASから事業会社への転職活動
Big4 FASからの転職先として選んだ職種・業種
転職先として考えた職種は、ワークライフバランスを確保できてM&A業務の経験がなんらか活かせる職種を探しました。その結果、経理職がOfficeツールのスキルを活かしつつ数字の素養が求められるということで最も親和性が高いと考えて選びました。
ただし、これ自体は少し失敗したと感じております(詳細後述)。
Big4 FASからの転職で利用したサービス、ツール
転職活動では、経理職に絞って転職をしようと考えたため、経理専門の転職エージェントを1社使い転職しました。
Big4 FASからの転職先として決めた会社の決め手
転職先として選んだ会社は、未経験でも経理職として採用していただける会社でした。
また、最終的な決め手になったのはその企業がたまたま「不動産会社」であった点です。
これまでのワークライフバランスの改善を図りながら、M&Aで培った経験を経理業務で活かしつつ、不動産業界に対する知識や知見を仕事をしながら得るということは私にとっては何重のメリットもあるように感じられてこちらの企業への転職を決めました。
Big4 FASからの転職後の年収
Big4 FAS時代は年収が約1,100万円ほどありましたが、そこから6〜7割程度に減少しました。
しかし、転職前に貯蓄を計画的に行っていたため、生活に支障はありませんでした。
また、収入の減少よりも新しい環境での知識獲得やより健康的な働き方を優先し、退路を断つ意味も込めて転職を行いました。
【転職後】Big4 FASから事業会社への転職結果
Big4 FASから事業会社へ転職後の状況
満足しております。不動産企業で働くことで、入社前に考えていた不動産事業に対して理解を深めることに成功しております。
また、人脈という点でも大きな成果はありました。
不動産企業だとやはり社内に家業が不動産関係である人も多く、そのような人と日常的に会話していると、「どこにビジネスチャンスが転がっているのか」が分かり勉強になります。例えば、1年前に民泊を家業として行っている従業員の方と話をして、東京で民泊の需要の高まりや始め方を勉強させていただきました。今では私も民泊事業に参入して、そこから大きな利益を得ています。
その一方で、悪いギャップとしては、ワークライフバランスが一部悪い点があります。
上場不動産企業であるがゆえにグループ会社や社内からの相談事項も多く、特に経理業務の繁忙期(例:四半期決算タイミング)は忙しくなってしまいワークライフバランスが崩れてしまいました。忙しさはBig4 FAS時代ほどではないですが、終電で帰宅することも繁忙期には珍しくありません。
今思い返すと、採用側としては、私がM&Aアドバイザーだったためある程度の激務体制がある事を想定して経理職として採用したのかもしれません。
Big4 FASで得た経験と知識は事業会社で役に立ったか?
Big4 FASで働いて得たOfficeツールのスキル、プレゼンスキル、PMOのスキルは転職後もかなり活用できております。
例えば、社内の研修やセミナーでは講師を務める機会もありますが、このような時はM&A業務で培ったプレゼンスキルなどは大いに役に立ちます。
Big4 FASから事業会社に転職をするとしたら気を付けるべき点
しっかりとライフワークバランスを確保できるかは確認すべきです。M&A業務に従事している過去を持つ場合、やはり採用側は必然的に「この人はハードワークに耐えられそう」と見てくる可能性は高いです。そうならないためにも、しっかりとワークライフバランスが確保可能かは確認するべきです。
また、そもそも、上場企業の経理職だと忙しさはある程度は免れられないなので、仮にワークライフバランスを求めて経理業務を志望する場合は未上場企業の経理職を目指した方が良いです。
Big4 FASから転職後、今後の中長期キャリア
足元では不動産投資家としての足場固めは着々と上手く進んでおります。
現在、不動産投資している物件は4件ありまして、うち1件は上述の通り民泊事業を展開しております。これら物件で一定の収益を得ているため今すぐに不動産投資家として1本で独立することも可能ですが、不動産市況の様子を見て今は経理職と不動産投資家の兼業を続けます。
一方で、今のペースを維持すると資産の保有が着実に進むため、3年以内に経理職も退職して不動産投資家として完全に独立して資本家になることを目指しています。
家族も応援してくれているため、実現性の高い目標だと考えます。
【最後に】管理者の分析
いかがでしたでしょうか?M&A業務を行い投資家や資本家と話をしていると「自分も資本家になりたい」と思う方もいらっしゃるかと存じます。
今回インタビューをさせていただいた方もまさにそのような方でした。最初は手厚い資本もありませんでしたが、年収ダウンを覚悟して不動産企業へ転職を行い、そこで情報を得ながら本格的に不動産投資を行うことで見事に不動産投資家への転身を進められております。
資本家側へのキャリアチェンジに関心がございましたら、本記事が是非参考になれば幸いです。
今後も更新をしてまいりますので、面白かったらX(Twitter)で記事をRT、もしくはアカウントのフォローをよろしくお願いします。
プライバシー保護のため、インタビュイーのプライバシーにかかる部分については管理者にて一部脚色を加えさせていただいております。こちらは、インタビューの内容に影響が出ない範囲で行っております