【事業会社】M&A業務経験後にベンチャーCFOへ転職した人の「働き方」「仕事内容」

M&A業務経験後にベンチャーCFOへ転職した人の「働き方」「仕事内容」

M&A(合併・買収)を経験したビジネスパーソンが、次なるキャリアとして「ベンチャー企業のCFO(最高財務責任者)」に転職するケースは多いです。M&A経験者の市場価値は依然として高く、CFO転職は「王道」とも言えるコースといえます。

しかし、そのキャリア転換には大きなメリットがある一方で、注意すべきリスクも存在します。

本記事では、M&A経験者がベンチャーCFOとして転職する理由から、CFOの業務内容、転職する際のメリットと注意点までを詳しく解説していきます。これから、ベンチャーCFOへの転職を考えている方は、是非参考にしてください。

目次

M&A経験者がベンチャー企業CFOに転職しようとする主な理由

M&A業務経験者の中で、ベンチャー企業のCFOへの転身を選択する人が増えています。その背景には、単なるキャリアチェンジ以上の理由があるからです。

では、その”単なるキャリアチェンジ以上の理由”とは何でしょうか?

具体的にどのような理由があるのかを見ていきましょう。

キャリアアップの機会

ベンチャー企業のCFOは、経営陣の一員として意思決定を担う重要なポジションです。

M&Aフェーズでは「支援者」の立場が多い一方、CFOとして転職すれば、経営戦略や資本政策の立案など企業成長の中核に携わることができます。Post-M&A人材にとって、これはキャリアを次のステージへ押し上げる絶好の機会です。

実際のところ、外部アドバイザーとして関わっていた経営判断や意思決定に、今度は当事者として携われることにやりがいを感じる人が少なくありません。

管理者がヒアリングをしたところ、M&Aアドバイザーを退職する理由の第1位は、多くの読者の方が想像する「ワークライフバランスの充実」を抑えて「意思決定をする側(投資家、経営者、事業家)になりたいから」でした。

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影響力と自己実現

CFOは財務戦略を超え、企業の成長を支えるリーダーとしての役割を果たします。

自身の判断やビジョンが企業の成長に直接つながるため、大きな達成感とやりがいが得られるのです。Post-M&A人材にとって、ベンチャー企業のCFOは自己実現の舞台でもあります。

経済的インセンティブ

一般的に、ベンチャー企業では、ストックオプションやIPO成功時のリターンといった経済的な報酬が期待できます。企業成長に貢献し、その成果を自身の成功として享受できる点は、Post-M&A人材にとって大きな魅力です。

一方で、かつてと比べると、ベンチャーCFOに転職する理由として経済的インセンティブを上げる理由は減っております。

理由として、CFOとしてジョインするころにはベンチャーのステージが進み、他のベンチャー役員と比較するとストックオプションの取得比率に限界がある事や、昨今のベンチャー企業のダウンラウンド上場が続いているようにベンチャー企業のIPO市況が芳しくないためです。

ベンチャー企業におけるCFO業務の主な内容

ベンチャー企業におけるCFOは、大企業のCFOとは異なる役割を担います。大企業では、経理や財務管理が主な業務となるのが一般的ですが、ベンチャー企業においては経営戦略の立案や組織体制の整備までを幅広く担当するケースが多いです。

ここでは、ベンチャー企業におけるCFOの業務内容を大きく3つのカテゴリーに分けて解説します。

1. 主要業務 | 資金調達と資金繰り管理

ベンチャー企業は、事業拡大のための資金が必要です。特に、スタートアップや成長フェーズの企業ではキャッシュフローが不安定なため、資金調達が経営の生命線となります。

CFOは、資金調達の全体戦略を策定し、実行します。主な業務は、以下のとおりです。

  • エクイティファイナンス:投資家やベンチャーキャピタルからの出資を獲得し、企業価値を高めながら資金を調達する。
  • デットファイナンス:金融機関からの融資や助成金を活用し、事業の安定化を図る。
  • 資金繰り管理:入出金の予測を立て、手元資金を効率よく運用し、事業が停滞しないようコントロールする。

2. 主要業務 | 財務戦略と経営データの可視化

財務データをもとに現状を正確に把握し、経営陣に対して戦略的な意思決定をサポートします。

具体的には、以下の業務が中心です。

  • 予算策定とコスト管理:事業計画に基づいて現実的な予算を組み、無駄なコストを削減する。
  • KPI(重要業績指標)の設定と分析:売上高、利益率、キャッシュフローなど、企業成長を測るための数値目標を設定し、進捗状況を可視化する。
  • 経営レポートの作成:経営層や投資家に向けて、企業の財務状態や成長見通しをわかりやすく報告する。

3. 主要業務 | 上記を除く管理業務

管理部門に属する、経理財務・総務・採用・労務・法務・広報などの各種業務を管掌します。

「人事や広報はビジネス組織に属するのでCFOの業務範囲外」など、会社によって違いはありますが、共通していることはバックオフィスに類する業務はCFOのラインに組み込まれるという点です。

4. 実際の業務配分

M&A業務を経験している方だと「1. 資金調達業務」が得意領域になります。

一方で、エクイティファイナンスやデットファイナンスは企業ステージに限らず頻繁に行うものではありません。

特に、規模が一定程度以下のベンチャー企業の場合、管理本部長をCFOが兼ねることも多く、そのような企業のCFOのメイン業務は「3. 上記を除く管理業務」となります。

M&A経験者がベンチャーCFOとして重宝される理由

M&A経験者がベンチャー企業のCFOとして高く評価されるのは、財務知識に加え、M&Aで培った経験や戦略的思考が、ベンチャーの成長に大いに貢献するためです。ここでは、その具体的な理由について見ていきます。

高度な財務戦略の実行力

M&Aの過程で培われる企業価値評価、資金調達、コスト削減、キャッシュフロー管理といった高度な財務スキルは、成長途上のベンチャー企業にとって非常に重要です。特に事業拡大やIPOを目指す企業では、エクイティファイナンスやデットファイナンスといった多様な資金調達手法への理解が強みとなります。

ベンチャー企業が成長戦略を進める中で、M&A経験者の確かな財務戦略は大きな武器となるでしょう。

経営者目線を持つCFOとしての価値

M&Aの現場では、経営層と密接に連携しながら戦略的な意思決定に関わる機会が多くあります。その過程で、自然と「経営者目線」が養われるのです。

ベンチャー企業においては、CFOがCEOと共に経営戦略を策定し、組織の舵取り役を担う場面が少なくありません。組織全体を俯瞰しながら成長を支えるCFOには、財務戦略だけでなく経営全体を見通す視点が求められます。こうした経営者目線を持つM&A経験者は、企業全体の成長を支える存在として、非常に重宝されるでしょう。

M&A経験者がベンチャーCFOとして転職するメリット

M&Aを経験した人材がベンチャー企業のCFOとして転職することは、キャリアにおいて大きなメリットがあります。以下では、その主なメリットを3つの観点から解説します。

経営の中核として事業成長に関与できる

ベンチャー企業のCFOは、経営層の一員として意思決定に深く関わる役割を担います。M&Aの現場では、企業統合やコスト削減など、経営の最前線で戦略実行が求められるため、M&A経験者は自然と「経営視点」を養っているものです。

ベンチャー企業では、CFOとして経営戦略や資本政策の立案に携わる機会が豊富にあるため、経営者としての実力を発揮し、企業価値向上にダイレクトに貢献する貴重な経験となるでしょう。

自らの経験とスキルを最大限に活用できる

M&A経験者は、財務分析力や資金調達スキルに加え、業務改善や組織統合といった幅広い能力を備えています。成長フェーズにあるベンチャー企業では、これらのスキルが極めて重要です。

特に、M&Aのプロセスにおいて培った問題解決力や実行力は、業務フローの改善や組織体制の再構築といった課題解決に大いに役立ちます。これにより、CFOとして自らのスキルや経験を最大限に発揮し、組織全体にポジティブな影響を与えることが可能です。

キャリアの市場価値をさらに高めることができる

ベンチャー企業のCFOとしての経験は、自身の市場価値をさらに高める大きなチャンスとなります。M&A経験に加え、ベンチャー企業の財務責任者としての実績は、今後のキャリアにおいても大きなアドバンテージとなります。

また、経営層や投資家とのコミュニケーションを通じて経営者としての総合力も養われ、将来的にはより高いポジションや新たな挑戦への道も開けるでしょう。

M&A経験者がベンチャーCFOとして転職する際の注意点

ベンチャー企業のCFOへの転職には大きなやりがいとチャンスがありますが、一方でいくつかの注意点も存在します。転職を検討する際には、以下のリスクを理解しておきましょう。

年収が大幅ダウンの可能性あり

ベンチャー企業は成長途中であり、経営基盤が安定していないことが多いため、CFOの報酬は相対的に低く抑えられる傾向にあります。

ただし、企業の成長に貢献することでストックオプションや将来的な報酬改善の可能性もあるため、短期的な収入減と長期的なリターンを天秤にかけて判断することが必要です。

CFOの業務が思い描いていたものとは大きく異なるリスク

大企業やM&Aの現場でのCFO業務は、財務管理や資金調達が中心ですが、ベンチャー企業では業務内容が大きく異なることがあります。経理業務の立ち上げや組織体制の整備など、時には自ら手を動かす泥臭い仕事が求められるケースも少なくありません。

さらに、人事や法務といった財務以外の領域にも関わることが多く、理想としていた「戦略的CFO」とのギャップに悩むこともあるでしょう。

転職前に、業務範囲をしっかり確認し、自身のスキルや志向に合っているかを見極めることが大切です。

ベンチャー企業特有の不確実性

ベンチャー企業は成長スピードが速い反面、事業計画や経営方針が頻繁に変わることがあります。

このような不確実性の高い環境では、CFOには柔軟な対応力とタフな精神力が不可欠です

例えば、資金調達が計画通りに進まなかったり、急激な事業拡大による資金繰りが難航するケースでは、CFOとして迅速かつ的確な判断が求められます。不安定な状況を受け入れ、変化をチャンスと捉えるポジティブなマインドを持つことが、ベンチャーCFOとして成功するための鍵となります。

まとめ

ベンチャー企業のCFOは、M&A業務で得たスキルや経験を存分に活かしながら、企業の成長を支えるやりがいのあるポジションです。

しかし、転職を成功させるためには、自身のスキルやキャリアビジョンをしっかり見つめ直し、求められる役割や環境を正しく理解することが大切です。

これからCFOとしてベンチャー企業の成長を支えようとする方にとって、その挑戦は間違いなく次のキャリアの大きなステップとなるはずです。

本記事がベンチャーCFOへの転職を考えている人のお役に立てば幸いです。

今後も更新をしてまいりますので、面白かったらX(Twitter)で記事をRT、もしくは管理者アカウントのフォローをよろしくお願いします。

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この記事を書いた人

IBD→FAS(M&A)→事業会社(社長室/事業責任者)。USCPA全科目合格。現在は複数事業(BtoB SaaS)責任者、新規事業担当、経営管理・M&A・IRが主要業務

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